私刑マラウイ版 (モブジャスティス)

 

現地語でなんというのか知らないが、「モブジャスティス」という、私刑文化がマラウイにはあるという。

 

悪いことをした人には、容赦なく民衆の手によって制裁を加える。「暴徒による正義」とでも訳されているのだろうか。

 

少し前に任地にて、とある事件で殺害された被害者の同僚が、加害者一族(加害者本人は逮捕されている)に仕返しをしにいき、結構な死傷者が出た事件があった。これは大きすぎる例だけど、身近なところでモブジャスティスが行われていると聞いてはいる。

 

強盗犯が市民に捕まり、四肢を切断され、道端に放置されているとか、交通事故(ひき逃げでもしたのかな?)で、火あぶりにされているとか。。。

 

これもちょっと過激すぎるけど。

 

本日うちの30m先で何やら賑やかで、自宅警備の井崎くんが見て見て!と楽しそうに手招きしてくれた。何しているのかなとのぞいてみると、一人の青年が、5人の大人たちに棒や素手でばっしばし叩かれている。

 

青年は泣き叫びながら逃げているようにも見えるが、逃げ走ることはせず、戯れているような、取っ組み合い?というか自ら殴られに向かっていくような不思議な集団がいた。

 

 

何しているの?

と井崎くんにきくと、青年が盗みをしようとして、町内警ら隊に捕まっているところ(笑)。

 

 

 

笑うところかなぁ。。。

他のご近所さんもわらわらと集まって来て、15名のオーディエンスが出来上がっている。

 

「おら!このやろ!」

とキックパンチされている姿に、女性たちは「あぁ・・・」と痛そうな声をあげて見ているが、もちろん止めることもしないし、もちろん加わることもしない。これぞ第三者。傍観者。かくいう私も「これ、もしやのモブジャスティスだ」と傍観中。

少しずつ家から離れていったので私は最後まで見届けなかったが、どのタイミングで事を終えるのかちょっと気になった。

 

町内パレードをして、見世物にしているのかな。とんだ私刑制度だ。

 

 

首都研修中に「だから気をつけなさいね」と事務所から言われたことがあった。

交通事故でもこのようにモブジャスティスを食らってしまうので、万が一事故を起こしたら、とりあえずオーディエンスに囲まれる前に走ってその場をさり、最寄りではない警察に駆け込めと。

 

警察が来るのを待っていたら、命取りになるかもしれないから。

法の裁きを受けるのは当然だが、問答無用に私刑を受けるのはだいぶ嫌かな。。。

 

 

戦争をしてこなかったマラウイ。

平和を愛しているというが、その正義が時にすごく過激な方向に向く気がする。

 

そして、人の心があるのかないのかよくわからないが、制裁を加えられている人を見て笑う。悪いことをしたから当然だというが、そのために法律があって、警察がいて、刑務所という制度がある。あんな風に市民警ら隊によって、コテンパにされるのは見ていて心身痛くなる。何か悪いことをしたら、見て見ぬ振りをせず、地域住民の手によって罰せられるということは、抑止力になっているのだろう。

それを承知で、一か八かで盗みに入るというのは相当バカなのか、切羽詰まっているのか。いいのか悪いのかよくわからない文化だな。ちょっと怖い。

 

近所で盗みがあったというのもやっぱりちょっと怖いかな。

 


こぼれ話

井崎君に「写真撮らないの?」と聞かれた。

わたし、そんな林家じゃないけど、撮れるもんなら撮りたいけど、いや、撮らないよこの現場は。


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